一言でいうと、Terraformは「Infrastructure as Code (IaC)」を実現するためのツールです。

Infrastructure as Code (IaC) とは?

IaCとは、サーバーやネットワーク、データベースといったITインフラを、手作業ではなくコードとして定義し、自動的に構築・管理する手法のことです。これにより、以下のようなメリットが得られます。

  • 自動化と高速化: インフラの構築や変更がコードの実行によって自動で行われるため、迅速かつ繰り返し実行できます。
  • 一貫性と再現性: コードで定義されているため、常に同じ状態のインフラを何度でも再現できます。環境差によるトラブルを減らせます。
  • バージョン管理: インフラの定義をコードとしてGitなどのバージョン管理システムで管理できます。変更履歴の追跡、レビュー、ロールバックが容易になります。
  • コラボレーション: インフラの状態や変更がコードとして共有されるため、チームでの共同作業がしやすくなります。

Terraformの特徴と仕組み

Terraformは、HashiCorp社が開発したオープンソースのIaCツールで、特に以下の点が特徴です。

  1. 宣言的な設定言語 (HCL - HashiCorp Configuration Language):Terraformの設定ファイルはHCLという専用の言語で記述します。この言語は「どのような状態にしたいか(Desired State)」を記述する宣言的なスタイルです。「どうやってその状態にするか(How)」の手順を記述する必要はありません。Terraformが現在の状態と設定ファイルに書かれた状態を比較し、差分を検出して必要な操作(作成、変更、削除)を自動的に判断・実行します。
  2. マルチクラウド・マルチサービス対応:AWS, Google Cloud (GCP), Microsoft Azureといった主要なクラウドプロバイダーだけでなく、Kubernetes, Docker, GitHub, Datadogなど、様々なサービスやプラットフォームに対応しています。これは「Provider」というプラグイン機構によって実現されています。1つのツールで複数の環境を横断的に管理できるのが大きな強みです。
  3. ステート管理:Terraformは、自分が管理しているインフラの現在の状態を記録するための「ステートファイル (state file)」を持っています。このファイルには、設定ファイルで定義したリソースが、実際にどのクラウド環境のどのリソース(IDなど)に対応しているかのマッピング情報などが含まれています。Terraformは、このステートファイルと実際のインフラの状態、そして設定ファイルの内容を比較して、次に何をすべきかを決定します。ステートファイルは、チーム開発の場合はリモート(S3, GCS, Azure Blob Storageなど)に保存して共有するのが一般的です。

Terraformの基本的なワークフロー

Terraformを使ったインフラ管理の典型的な流れは以下のようになります。

  1. 設定ファイルの記述 (Write): *.tf ファイルにHCLを使って、構築したいインフラ構成(どのクラウドに、どんなサーバーを何台、ネットワーク構成は...など)をコードで記述します。
  2. 初期化 (Init): terraform init コマンドを実行し、設定ファイルに必要なプロバイダープラグインなどをダウンロードします。
  3. 計画 (Plan): terraform plan コマンドを実行します。Terraformは現在のインフラの状態(ステートファイルやクラウドAPIから取得)と設定ファイルの内容を比較し、設定ファイルの状態にするために「どのような変更が必要か(何を作成、変更、削除するか)」をリストアップします。この時点では実際のインフラ変更は行われません。
  4. 適用 (Apply): terraform apply コマンドを実行します。planで表示された変更内容がユーザーに確認され、承認されると、Terraformが各プロバイダーのAPIを呼び出して、実際のインフラリソースの作成、変更、削除を実行します。
  5. 破棄 (Destroy): 不要になったインフラをまとめて削除したい場合は、terraform destroy コマンドを実行します。管理下の全てのリソースが破棄されます(実行前に確認があります)。

Terraformを使うメリットまとめ

  • マルチクラウド/マルチサービス管理: 様々なプラットフォームを統一された手法で管理できる。
  • コードによる管理: インフラをコードとしてバージョン管理し、変更履歴を追跡できる。
  • 自動化と再現性: 迅速かつエラーなくインフラを構築・再現できる。
  • 宣言的なアプローチ: 「どうあるべきか」を記述するだけでよく、手順を細かく書く必要がない。
  • 強力なコミュニティとエコシステム: 豊富なプロバイダーとモジュール(再利用可能な設定のまとまり)が利用可能。

まとめ

Terraformは、ITインフラをコードとして管理(IaC)するための強力なツールであり、Node.jsがJavaScriptの実行環境であるように、インフラ管理における「実行エンジン」のような役割を果たします。特にクラウド環境が複雑化・多様化する現代において、効率的で信頼性の高いインフラ運用を実現するために広く利用されています。

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